2009年11月25日ITC中部の自主勉強会として浜松日赤病院見学・勉強会を開催した。参加者は8名と少なかったが、病院見学という普段体験する機会の少ない企画であったので、参加者の知識吸収意欲は高いものがあったと感じた。今回の見学会の主目的は、この新築移転と医療情報システムの導入に関しその推進体制や課題解決の状況を学習することである。
<病院概要>
事務部長及び企画課長様からの病院概要のご説明を受けた。浜松日赤病院は昭和13年に開設され70年を越える歴史を有する病院である。ベッド数312、床診療科目20科で、救急医療、災害救護を使命とする地域中核病院を目指している。平成19年に浜松市の中心部から郊外に新築移転し、それまで紙を中心とした業務処理から電子カルテを中心とした医療情報システムの導入を行った。
<院内見学>
立地が郊外である分広い敷地を持ち、その強みを活かし建物、設備が災害医療を考慮した設計となっており、災害時には600人を収容できる能力を持つとのことである。また、外来および病棟設備ともに患者へのホスピタリティ向上の観点からあらゆることに工夫をしたとのことである。実際に見学し、顧客(患者)視点が随所に見られ、入院するならこの病院でと思ったものである。
<質疑応答>
今回の見学会においては事前に参加者に質問事項等を提出してもらい、病院に提出しておいた。質問内容はシステムの構築、導入、運用各フェーズ別の課題や、病院経営や業務改善、医療システム活用等の観点で提出し、質疑応答はその事前質問に対する回答書を中心に進められた。又、回答書とは別に新システム導入の経緯や総合医療情報システム概要なども資料を準備いただき、説明をして頂いた。
システム導入後の課題として、医療従事者の医療行為とコンピュータへの入力作業が同時に発生し疲労が増した。慣れだけの問題ではない側面もあり診療効率の低下を招いているとのこと。またコストがかかり過ぎ、費用対効果面ではまだまだこれからの活用とのことである。特にシステムの保守に法外な費用がかかっているとのことであった。この点については参加者の一人からIT調達段階での保守費用まで明確にしておく必要があるとのアドバイスがあった。
<報告後記>
業者選定後の電子カルテの導入検討の開始が平成19年5月で、導入が11月と極めて短期間であったにもかかわらず予定通りに導入できたのは全国的に標準化された運用に基づいたパッケージを導入し、運用を合わせてせていくを基本方針としたことが大きい。
システム導入前の検討段階で現場を巻き込むということが定石ではあるがなかなか難しいのが一般的である。しかし、日赤病院には色々な職種スタッフがいても、人の命を救うという共通した高い使命感のもと、専任担当者まかせではなく、院内情報管理委員会のもとに9つのワーキンググループを設置し、検討が進められた。このことがプロジェクトを成功に結び付けた要因であると感じた。
文責 ポイント委員 小川
以上